2021/03/06

明治四年一月十六日 (1871/3/6)

「曇り空、東風。昨日まで一緒だった者達に見送られ、十時過ぎに錨を上げた。五時頃に佐賀の関を通過した。十二時過ぎに波風が立ち始め、雨模様となった。記、昨夜、秋山周作が九州から戻ってきて、松方と鳥尾の手紙を持参すると共に、九州の近情について大まかなところを伝えてくれた。遠田甚助と池良からの手紙も届いた。『二つ岩の狭間の竹林』と題された張秋谷の掛け軸を入手した。五岳にインドの墨画を贈られた。」

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張秋谷、後に張秋穀と名を改めたこの画家は中国生まれなのだが、十八世紀に長崎に来舶し南宗画を日本に伝えた『来舶四大家』の一人だ。職業的画工が仕事で描くのではなく、知識人が余技として描くことを主とした南宗画は私の理想でもあり、これを機に蒐集できたのは僥倖であった



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明治四年五月十三日 (1871/6/30)

「晴れ。十一時頃に一時の豪雨と雷鳴。安玄佐とその倅が来た。井上世外が話しに来た。先日話した藩の会計局の一件や、その他の件の評議は先延ばしにされたようだ。十年後に待ち受けている大いなる災いが見えている者達はほんの一握りしかいなく、多くの役人達は目の前の問題に対応するのみだ。私はこの...